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国際茶道文化講座



第43回     「The Wonderful World of Language: The DNA of Communication.」

  講  師:ジョン・フリーマン先生

米国フィラデルフィア市出身。日本在住歴は40年以上。
1967年に初来日。
1972年ハワイ大学大学院卒業(専攻:ESL[研究:言語心理学])。
1973年に再来日、財団法人今日庵の秘書室外事課、並びに裏千家学園英語講師に励務、その後慶應義塾大学・学習院大学で教鞭をとる。
1984年日米会話学院官庁委託科専任講師となり、総理府(現・内閣府)、経済企画庁(当時)、警視庁、会計監査院等及び大手民間企業の第一線で働く社員を対象にビジネス英語を担当し、2005年に日米会話学院副学院長となる。

現職は、東京大学大学院 新領域創成科学研究科環境学研究系・サスティナビリティ学教育プログラムの特任教授(ロジカル・シンキングと科学技術英語担当)。
主な著書は、『大人のための英会話上達法 さびた英語を学びなおす』、『TOEIC Test攻略ポイント知ったもん勝ち』等。
                    開催日時  平成26年7月13日(日)13:00〜14:30
                    場   所 茶道裏千家東京茶道会館


  此の度の国際茶道文化講座には、椿邦司氏(当協会理事)や小林町子氏(当協会評議員)、英語茶道教室の講師の方達や当協会賛助会員等、多数の方にご出席頂きました。
  講師に裏千家学園において長らく英語のご指導をされていたジョン・フリーマン氏を招き、「The Wonderful World of Language: The DNA of Communication.」という演題で、講演は英語と日本語を織り交ぜながら進められていきました。
  異文化間での交流の為には、それぞれの国の言語を学ぶ事は勿論、文化や歴史を知る事も大切であると、実例を示しながら説明され、普段何気なく使っている日本語や、お茶の世界の言い回しなどを、どの様に英語で表現していますかとの問い掛けに対して、受講生はそれぞれ考えを巡らせている様子でした。
  続いて、類語や同様の意味とされる英語、日本語の語句を取り挙げて比較してゆき、それぞれの語源からくるニュアンスの違い等を解説されました。
  また、講演に合わせて、森宗明氏(当協会理事)による茶席が設けられ、国際色豊かな道具組に参加者は目を楽しませ、心づくしの一碗のお茶を味わられました。








第35回     「日本文化を発信する時代の翻訳―翻訳へのお誘い―」

  講  師:小林町子先生

財団法人 国際茶道文化協会評議員。翻訳家。
バベル翻訳大学院(USA)プロフェッサー。社団法人日本翻訳協会理事。
青山学院大学文学部英米文学科卒業。バベル翻訳家養成講座、英米文学翻訳講座修了。
1979年よりハーレクインロマンスを翻訳(訳書119冊)。ほかに「愛をもう一度」角川書店(共訳)、「イギリス田園の小さな物語」PHP研究所、「7人目の乙女の伝説」バベルプレス(監訳)、「茶の本」バベルプレス(監訳)。
                    開催日時  平成22年9月19日(日)13:00〜14:30
                    場   所 茶道裏千家東京茶道会館


  翻訳家として豊富なご経験をお持ちの小林町子先生は、財団法人国際茶道文化協会の評議員をつとめられるとともに、英語茶道教室講師として指導にあたられています。
  今回の文化講座では、裏千家サンフランシスコ出張所会員で文筆家・料理研究家のVettina Vitell 女史が書かれた“The World in a Bowl of Tea”を教材に、翻訳の魅力を分かりやすく説明してくださいました。
  当日は会場3階に呈茶席が設けられ、受講者は薄茶を一服してから講堂へ。
  小林先生は、教材の同じ箇所について複数の具体的な訳例を示されながら、翻訳者がどのような言葉を選択するかによって、訳文の印象が大きく異なると説明されました。
  「自分には感性が無い、と諦めている方もいらっしゃるかも知れませんが、感性は育てるもの。著者の気持ちを汲み取って楽しみながら翻訳すれば、それは必ず読者にも伝わります」
  と“心ある翻訳”を心がけることの大切さを説かれる小林先生。
  日頃から日本文化を紹介する機会の多い受講者は、人の発想や解釈について深く考える世界の広がる翻訳の楽しさや、知的好奇心を持ち続けることの大切さを学ぶ機会となりました。
  ※平成23年4月から、小林先生による英語茶道教室「翻訳講座」を行っております(毎月1回・日曜日開催)。途中入会も可能ですので、ご興味のある方はお気軽に事務局までお問い合わせください。




第34回    「命ある限り、心で学ぶ」

  講  師:加藤タキ氏

1945年、東京生まれ。米国報道誌リサーチャーを経て、オードリー・ヘップバーン、ソフィア・ローレンをはじめ多くのアーティストのCMや音楽祭などにおいて、国際間のコーディネーターとして先駆的役割を果たす。
講演、各種委員、TV、著述など、様々なメディアで幅広く活躍中。
認定NPO法人 難民を助ける会の副理事長をはじめボランティアにも精力的に励む。
日本アンチエイジング歯科学会「アンチエイジング アワード2009」受賞。
近著『50歳からの自分磨き』(大和書房)。
2001年より財団法人国際茶道文化協会評議員。
                    開催日時  平成22年7月4日(日) 13:00〜14:30
                    場   所 茶道裏千家東京茶道会館


  7月4日、コーディネーターで当協会評議員の加藤タキ先生をお招きして、第34回国際茶道文化講座を開催しました。
  日本のコーディネーターの先駆者として国際的に活躍されてきた加藤先生の流暢な英語での自己紹介から始まった講演。女性初の国会議員で100歳の人生を文字通り“生ききった”ご母堂・故加藤シヅエ先生の姿を通じて学ばれたことを中心に、「心で学ぶとは、感動するということ。毎日を一所懸命、真剣に、誠実に生きましょう」と想いの込もった力強い言葉で参加者に語りかけられました。
  子どもの教育や介護など、加藤先生が話される様々なエピソードやメッセージを通じて、各参加者が自分自身の生き方を見つめ直す貴重な機会となりました。
  講演後には、加藤先生のご著書『50歳からの自分磨き』の購入者に一人ひとり丁寧にサインをしてくださり、また、後日講座参加者全員に加藤シヅエ先生の歩みをまとめた冊子『ひとすじの道』を特別に頂戴しました。

  呈茶席(英語教室講師 阿蘇宗宏先生 担当)




第33回   「禅とお茶」

  講  師:嶋野榮道老師

昭和7年、東京生まれ。
平林僧堂、龍澤僧堂で修行の後、渡米。
ハワイ大学に学び、昭和39年、単身ニューヨークに渡る。
同43年、マンハッタンにニューヨーク禅堂正法寺を開く。
同51年、ニューヨーク郊外のキャッツキルに大菩薩禅堂金剛寺を開く。
平成16年第38回佛教伝道文化賞受賞。
                    開催日時 平成22年5月30日(日) 13:00〜14:30
                    場   所 茶道裏千家東京茶道会館



  嶋野老師は、臨済録の臨済大悟の機縁をテキストに取り上げられました。禅と云うと難しいものと構えがちですが、参加者全員で英文を朗読する内に講義に引き込まれていきました。
悟りの機縁は様々との事ですが、文明が発達し物質に恵まれている今日ほど、“本来の自己”を自覚し真の心の安らぎを得る事の重要さを感じます。
  質疑応答では、お茶の世界でも重要な“PURIFICATION”のご説明で、“自分自身の強欲さ、怒り、愚かさを清める”という事とお教え頂き、初めて合点が行きました。
  アショカ王の碑文をテーマにした梅津先生のお茶席も印象深いものでした。
  仏陀の教えに目覚めその教義を実践した偉大なアショカ王の理念を記した紋章は、インドの国旗に描かれ、今現在も私たちに“如何にあるべきか”と問い掛けている様です。
  仏教は無数の人々の命を懸けた努力により、二千年以上も受け継がれ今私達はその恩恵を受け、生きる喜びを感じる事が出来るのだと思います。
  此処に集い嶋野老師のお話しを伺い、梅津先生のお茶席でアショカ王の碑文に巡り合えたこの御縁は、日々学んでいるお茶故と有り難く思います。
  又、アショカ王の御軸は、田中博美先生のお手作りのものと伺い、先生の世界平和への祈りに深く感動しました。
  協会会員  小笠原寿子記






第32回   「文化、語学、お茶と私」“Culture, Language, Tea and Me”

  講  師:ジョン・フリーマン先生

ジョン・フリーマン先生は、ハワイ大学大学院修士課程修了(ESL)、ハワイ大学卒(日本語)。
1970年大阪万国博覧会で裏千家鵬雲斎千 玄室大宗匠(当時家元)と出会い、会場で茶の湯結婚式を挙げたのを機に、裏千家みどり会(外国人茶道留学生制度)設立時に外国人賓客接遇通訳、初の“茶の湯英会話”を月刊誌「淡交」に連載されるなど、活躍されました。
その後、慶應義塾大学、学習院大学、明治大学短期大学講師を歴任、(財)国際教育振興会、日米会話学院で日本青少年・社会人の英語指導にあたり、同学院副学長として、又、フリーランス会議通訳者、東京大学大学院特任准教授として活動を続けておられます。
                    開催日時 平成22年2月21日(日) 13:00〜14:30
                    場   所 茶道裏千家東京茶道会館



                    ジョン・フリーマン先生の講演の感想
  第32回文化講座の講師はジョン・フリーマン先生でした。時折流暢な日本語も交えての英語による講演はユーモアにあふれ、楽しく、そして改めて考えさせられる深い内容の一時間半でした。
  先ず私たちが普段何気なく使っている日本語の矛盾した表現や、体裁を気にする日本人にチクリと苦言を呈されてから、大阪万国博覧会での鵬雲斎玄室大宗匠との出会い、元(財)今日庵 国際局長 森明子先生の許で活躍された裏千家時代、更にお茶を通して何十年振りの森先生との再会等々、興味深いお茶とのかかわりから講演は始まりました。
【先生の業績、裏千家時代の思い出などの資料を展示してくださいました。】
  そしてお話は文化に移り、リンゴや雪ダルマなどのほとんど私たちが意識せずに描いている絵の中にも育った文化の違いが表れる事を確認し、またその文化を表す言葉について話題が進みました。
  懐かしい動名詞や不定詞等英文法の用法や四文字熟語まで飛び出し先生の日本語に対する博識に驚かされました。漢字の部首に意味がある様に英単語のスペリングにも意味を持つ部分があり、英語と日本語は全く違った文化のはずが次々と共通する意味の表現や熟語を示され、人間はつながっていると再認識させられました。
  先生のマイカーナンバーは1518(一期一会)。お茶の心を大切にしていらっしゃいます。
  (元 英語茶道教室 受講生)青井良子




第31回  「日本、そしてその美しさ−パリ展覧会を終えて−」

  講 師: 今里 隆 先生(建築家、当協会評議員)

建築家。東京都出身。
吉田五十八(日本芸術院会員、東京藝術大学名誉教授)に師事。 東京美術学校(現東京藝術大学)建築科在学中より吉田五十八研究室に入室し、日本建築の真髄を学ぶ。
1964年、杉山隆建築設計事務所を創設し、日本建築に近代的要素を加えた独自の味わいのある日本建築のデザインを確立する。美術館、社寺、ゴルフ場クラブハウス、料亭、個人住宅等、様々な建築の設計を手掛け、現在に至る。
主な作品:平山郁夫美術館、成川美術館、日本美術院、国技館(共同設計)、京都醍醐寺霊宝館・伝法学院、池上本門寺御廟所・大客殿、金田中、竹茂楼、平山郁夫邸、松尾敏男邸、大平正芳邸 等
東京都建築士事務所協会特別賞受賞(池上本門寺御廟所及び大客殿)、建築業協会特別賞受賞(国技館)、きょうと景観賞受賞(竹茂楼)他受賞多数。
昨年4月、銀座吉井画廊にて建築作品写真展を開催し、今年11月2日から28日までパリ吉井画廊にて、ポンピドゥセンター、ソフィー・オーラン元館長の企画による建築作品写真展を開催した。パリの写真月間である11月、世界中から集まった人々に日本建築の美しさを表現し、好評を得る。
現在、2013年竣工予定の新しい歌舞伎座の設計監修中。

                    平成21年12月6日(日) 13:30〜15:00
                    場 所: 茶道裏千家東京茶道会館


                    今里 隆先生のご講演を拝聴して

  今里先生は、2009年11月パリでの先生の建築作品写真展およびフランス建築界の方々との交流を写真で紹介され、主要な設計例の解説をまじえて講演されました。

  建築を長い時間の視野に入れ、将来を見据えた文化として再認識し、日本建築はどのようにあるべきかを考えて次世代に日本文化として誇れるものを造らなければならないこと、また無駄なものを省き必要なものだけを残してプロポーションよく設計すること、を強調されました。

   ●日本文化の特徴
@日本は外国文化を積極的に取り入れ日本の風土・民族性に合わせて取捨選択し、新しいものを加え独自のものとして純化し、継承し、多様性がありながら統一性をも保ってきた。
A四季に恵まれた日本人は自然との調和を重んじ、自然を受け入れて一体化する生き方をしてきた。建築では明暗、陰影など奥行き深い世界を美しいと感じて光の演出をし、文学・絵画・茶道でも四季折々豊かな自然と調和し、融合する姿勢が根本にある。
B空間の捉え方において、日本画は余白が微妙な美しさを生み出し、音楽では間(ま)が聴く人に心地良さを与え、建築でも縁側・回廊で間を置き空間を緩やかに変化させ、また法隆寺五重塔は周囲との調和を考えて左右対称にしていないことが発見されている。
   ● 現在の日本建築の課題と対策方向
@伝統的な日本文化が失われつつあるので、日本人としての感性を大切にして次世代に伝えることが大事である。風土に合った建築ということでは湿気の多い日本において木造にかなうものはなく、1300年経つ東大寺正倉院はその例である。伝統的日本建築は和紙・畳・壁土を含め建物全体が呼吸して湿気に強いが、自然素材はコスト等様々な制約もあるので、建築材料は的確に判断されなければならない。
A建築物が消費物化してきている。日本政府から200年住宅ビジョンが出されているが、他用途の建物を含めて長寿建築を目指し、材料を熟知した上で環境に適した、耐久性のある、ゆとりの感じられる建築物としなければならない。
と締め括られました。
私も伝統ある日本文化としての茶道を更に深く学び、微力ではございますが伝えて行きたいと考えております。
協会会員  川島博子 記



                    呈茶席(英語教室講師 濱島宗輝先生 担当)

  今里先生がずっと主張なさり、基盤としていらっしゃる「日本文化を守り、後世に伝えていく」というお考えに深い感銘を受けられていらっしゃる濱島先生は、今回のお席のテーマも講演の内容に合わせての趣向で、いろいろとお道具をご用意なさいました。
  参加者一同、その取り合わせの見事さに感激。
  お茶の経験の浅い方々から、「とてもよい勉強をさせて頂きました。」という感想もいただきました。




第30回  「Charm of Chanoyu」

  講 師: ランディー チャネル 宗榮 氏

裏千家準教授。カナダ出身、京都在住。武道を学ぶために来日。
「文武両道」という精神から茶道を始め、裏千家茶道専門学校に入学。卒業後も修行を重ね、茶名「宗榮」を拝受。現在、京都・梨木神社などで茶道教室を開催。また、大学での講義・企業セミナーやCM監修、そして自らもテレビ・CM・ラジオなどメディアにも多数出演。雑誌やギャラリー・イベントでの呈茶など、各方面で茶道普及のために幅広く活躍中。2007年5月に茶道普及の一環として和カフェ「らん 布袋」を京都三条会商店街にオープン。
http://www.ranhotei.com
気軽にお茶を楽しめる場所として、月釜も開催。武道においては、二刀流六段練士・田宮流居合五段練士・弓道五段居合道 / 剣道 / 薙刀は有段の実力を持つ。http://www.15-1a.com

                    平成21年7月19日(日) 13:00〜14:30
                    場 所: 茶道裏千家東京茶道会館


 カナダ出身で京都在住の茶道家ランディ先生の英語での講演は、ご自身の紹介をはじめとした茶の湯に関するプレゼンテーションと盆略点前によるデモンストレーション、そしてQ&Aという順に行われ、持ち前の明るいキャラクターから楽しく繰り広げられました。

  堂々とした体格のランディ先生はそもそも武道に興味を持ち、1985年に来日し長野県松本市を基点に柔道、合気道、剣道、二刀流、居合道等さまざまな日本古来の武道に挑戦。1993年(平成5年)試合のため訪問した京都で茶の湯に出会い、1996年(平成8年)みどり会に入門以来、1999年茶名宗榮授受。2001年(平成13年)には準教授を授受され、現在は武道家としてよりむしろお茶の先生として関西では有名!とか

  世界の格闘技の中で武道を選んだ理由は日本の武道には「道」があるから。また、常に文武両道を旨とし、来日前から文化的な面にも興味があったとか。そして最初に京都で茶の湯に出会った時はいくつかの武道との共通点を見出し、すぐにはいれたそうです。まず姿勢を良くしてすり足等の体の動きの他、茶道具は武具を思わせ、茶の湯はその昔武士の間で盛んだったことも親近感を覚えたとのこと。計画したわけではないのにはじめ趣味だった茶の湯へと人生のバランスは武道の世界から大きく傾いていったのだそうです。

  茶の湯にはたとえばこれも武道との共通項であるspiritやphilosophyがあり、それは特に外国人に関心が高いとか。茶の湯にはその他、芸術性や、自然とのかかわり、勝負とは違うinteraction、そしてhospitality があり、それらはすべて外国人にも容易に理解でき、決して日本だけのものではないと指摘しています。また和敬清寂や利休七則など茶の湯のルールもみな実生活に応用できることとしてわかりやすいと。

  そして彼にとって茶の湯の魅力は一言でpeople!これはまさに同感! No people no teaとも。だからこそあらゆるところに茶の湯を広める、種をまくことに務めたいとのこと。

盆略点前は洗い茶巾でと、 染付薄器(清時代)、方形ガラス製茶碗(市雄作)、茶杓「露」坐忘斎御家元作、painted wooden tray made in Italy、 建水(タイの雲水の食籠)という取り合わせで、会場から男女各1名ずつお客様が決まると、銀のお皿にのせたお菓子が出され、(ご銘は「川遊び」京都の柏家光之製)。厳粛のうちに1人ずつふるまって終了。
軸の代わりに扇「稽古照今」坐忘斎書。
(写真をクリックすると拡大します。)
 その後Q&Aとなり、茶の宗教、茶の湯の精神とビジネス、立礼についてなど、ランディ先生の解釈としてお答えしたほか、はじめてのお客様には作法をうるさく言わないことなどをユーモアを交えて答えておられました。

  本日の聴衆の方々は英語の講演になれておられ、Q&Aも流暢な英語で行われ、国際茶道文化協会の行事らしいひと時となりました。ご紹介した何人か通訳ガイドの方々から、短い講演でしたが外国人を茶室にご案内する時のヒントをたくさん学べて興味深く感銘を受けた講演会でしたと感想をいただきました。どうもありがとうございました。
協会会員 宝来紀子 記





第29回  「『侘び』を世界に説明する−Explaining "wabi sabi" to non-Japanese」


講 師:  岡本 浩一 先生(東洋英和女学院大学教授)社会心理学者。

東京大学社会学博士。東洋英和女学院大学人間科学部教授。
オレゴン大学フルブライト助教授、フルブライト留学試験の試験官を数度、カーネギーメロン大学大学院博し学位審査委員などのほか、科学技術振興事業機構・社会技術研究開発センターで社会心理学部門の研究指揮をとり(平成18年まで)、わが国の社会技術研究の萌芽と確立に尽力した。
現在、内閣府国民生活審議会委員、原子力委員会専門委員など兼務。
『淡交』に「茶道心講」を10年連載し、裏千家淡交会巡回講師として「茶道による心の癒し」を説く。『茶道心講 茶道を深める』(淡交社)など、著書多数。

日 時:平成21年4月19日(日) 13:00〜14:30

場 所:茶道裏千家東京茶道会館

お茶席:12:00・12:30・14:40  当協会 高橋宗陽講師


            岡本宗心先生「侘びを世界に説明する」を拝聴して

  「侘び」とは何か、今や日本人にとっても難解なこの概念について、岡本先生の興味深く貴重なお話を沢山の映像を交えながら、楽しく拝聴致しました。社会心理学者ならではの深い洞察はとてもおもしろく、説得力のあるものでした。例えば、かの戦国時代、緊張の連続の日々を送る戦国武将達には、心の安定のために「侘び」「寂び」への真剣な希求があり、「寂び」を体現する「侘び」た茶碗を身近に置くことによって「本来の自己」を取り戻すきっかけとしたのではないかという事等、茶道が誕生した時代のそれに携わった人々の心境への洞察は、改めて「茶の道」を考える上で、また「侘び」を外国の方々に説明する上でも非常に大きなヒントとなりました。また極小の空間を用いて「侘び」を提示してみせた利休の革新性のお話から、現代の茶道における、現代の「侘び」とは何かという大きな課題をいただき、益々「寂び」と「侘び」について深く学んでゆきたいとの思いを強く致しました。
協会会員 坂井美予 記








第28回  「茶の湯と香の関わり」
―茶室に漂う香のかおりに茶の湯の心をみる―
  講 師: 濱島 宗輝 先生(当協会英語茶道教室 講師)

      昭和61(1986)年より海外研修旅行に参加 カナダ、オーストラ
        リア、アメリカ、ヨーロッパ各国、北欧、マレーシア等を巡る
      昭和63(1988)年  裏千家インターナショナルアソシエーション
        入会
      平成 8(1996)年  香道御家流22代三條西堯雲宗家に師事
        宗家主催の香会、講習会などに出席する
      平成15(2003)年  東池坊茶花一級教授取得
                   (雅号 瑞嶂亭溪雲)

  日 時: 平成21年3月8日(日) 13:00〜15:00
  場 所: 茶道裏千家東京茶道会館


            濱島宗輝先生のご講演「茶の湯と香のかかわり」を拝聴して

  このご講演では、香が仏教と同時期に大陸から伝来し、日本の長い歴史の中で貴族等の上流階級を中心にいかに様々に栄え、日本独自の変化と発展をとげてきたか、英語を交えてわかりやすくご説明いただきました。
  会場には床の間が作られていて、和歌の書かれたお軸がかかり、聞香の一場面が再現されて英語で説明がなされたばかりか、香炉に焚かれたお香が聴衆全員に回されました。同じお香でも時間がたつと違った香りになるとのことで何度も「聞く」ことができました。最後には古式ゆかしく声高らかにお軸の和歌が読み上げられ、講演会場は別世界に!
  濱島先生の日本文化への深いご造詣に心から尊敬申し上げるとともに、こまやかなお心遣いとお見事な工夫にあふれたご講演には大変感激いたしました。
  お連れした2人の方の感想をそのままご紹介します。
  「お茶をいただき、お香のお話も聞けてとても有意義でした。同時に日常生活から離れて無心になる一時を過ごすことができました。」
  「香道というのは見るのも『聞く』のも初めてでとても良い経験でした。また講演の後のお茶もよかったです。一輪の椿と掛け軸。お茶をたてる女性の静謐な中にもよどみがなくしかも凛とした雰囲気が素晴らしいと思いました。」
協会会員 宝来紀子 記


会場では英語教室受講生による英語での聞香の説明と実演がありました。

会場で香を聞く参加者の方々

呈茶席の設え





第27回  「Universality of Tea」
 講 師: スァーン・ビスゴー 先生
1946年 デンマーク王国に生まれる
  15歳 キリスト教の信仰を放棄
  18歳 ギリシャ、トルコへ旅行をし、ヨーロッパ以外の文化に出会う
  19歳 岡倉天心「茶の本」に出会い、ライフスタイルを変える
1960年代からインドを度々訪れる
  27歳 日本行きを決心 コペンハーゲン大学で3年間日本語を学ぶ
1976年 来日
      裏千家学園みどり会入学
1980年代初め 茶人として母国のメディアで度々取り上げられる
1993年 茶名「宗園」拝受
2003年 コペンハーゲンの東海大学ヨーロッパ学術センターで茶会
      のセミナーを開催
2005年 コペンハーゲンの国立博物館でデモンストレーション
      デンマーク・クロンボー城での茶会でベネディクト女王に呈茶
一宇会所属。哲学家。
 日 時:平成20年11月30日 (日)13:00〜14:30
 場 所:茶道裏千家東京茶道会館
 お茶席:12:00・12:30・14:40 当協会英語教室講師 東宮宗洋


  「お茶には普遍性がある。コーヒーと比べればよくわかる。これはなぜか。薬であったというのが理由の一つである。薬用効果ゆえにどこでも受け入れられた」
  ヨーロッパ、アジアの多くの国で茶道の指導をされたビスゴー先生は、お茶そのものの普遍性から茶道の普遍性までを熱っぽく語られました。
  「茶道は大変価値あるもの、日本人が世界に伝えるべきものである。茶道の理解は体験によって得られる。これは書物を読むのとは違い、他人が奪うことのできない深い理解となってその人の中に定着する。茶道の中で特にすばらしいのは点前である。道具の置き場所や自分が座る場所は厳しく定められている。寸分たりとも狂ってはならない。これを実行しようとすれば、ある一点に全神経を集中できる。その一点が次々と変わってゆくのに。座禅の場合は一点を見つめているのだが、気持ちを集中するのは難しい」
  諸外国での茶道については
  「外国の茶道と日本の茶道は同じではない。環境も違い、人々が茶を学ぶ動機も違う。根本が同じならあとは違いがあってよいと思う」
  お話はさまざまな国の文化、思想、その違いや共通点にも及びました。時間が許せばさらに多くを語っていただけたことでしょう。

協会評議員 小林町子 記






第26回   「ヨーロッパの茶の湯 50年」
 講 師:野尻 宗命 女史
現裏千家ローマ出張所(チエントロ ウラセンケ)所長
1969年ローマ出張所を開設し、茶の湯文化の海外普及としてイタリアを中心に欧州各国において活動、現在も日伊間の文化交流に努めておられます。
著書 自伝「ローマでお茶を」主婦の友社
平成10年外務大臣表彰授与
 日 時:平成20年8月31日13:00〜14:30
 場 所:茶道裏千家東京茶道会館
 呈 茶: 12:00〜13:00


  ローマでお茶を教えてほぼ半世紀。野尻宗命先生はたくさんのお弟子さんを育ててこられました。そのような野尻先生にうかがいたいことといえば、まずローマのお弟子さんたちはお茶のどこに惹かれてお稽古を始め、さらに長い間続けてこられたのか、ということでしょう。先生のお話はそのあたりから始まりました。

まず腹式呼吸から
  ローマでのお稽古は座禅から始まり、まず呼吸を整えます。丹田で呼吸できるようになると気持が落ち着き、人と和やかに付き合えるようになって仕事もうまくいきます。これはお稽古に来る人たちが日常生活の中で大いに望んでいることです。
お稽古中に呼吸が浅くなってくると、お点前もうまくいかなくなります。こういうときは、呼吸を深くするようにすすめます。丹田で呼吸すると気持ちが落ち着き、お点前もしっかりできます。

外国でのお茶は現在第三段階
  外国でのお茶は岡倉天心が「茶の本」を著した頃が第一段階。つまり日本は文化を持つ国だということを知らせた時代です。これが進むと、日本を知りたいと思う人が出てきます。
  そういう人に、お茶は総合文化だということを知らせた時代が第二段階です。お茶に使われる工芸品はマイナーな芸術ではありません。それを知ってもらう時代、つまり文化紹介の時代です。現在のお茶は心のあり方を追求する場であり、これが第三段階です。
  人々はお茶の中に主客が一つになる方法を見出しています。茶道というのはただお茶を飲むことではありません。どうすれば落ち着いていられるか、人とうまく交われるか、それを知るのが茶道です。頭で相手を理解するのではなく、心で理解するのです。自分の心を開き、相手の心の中に入れるかどうかの問題です。
  ある芸術家がお茶とはすごいものだと感じた、という話を聞きました。人間の限界を超え、その先に踏み出せるのではないかと思ったのだそうです。

2006年のシンポジウム
  2006年「裏千家ヨーロッパの集い」が開催されたとき、ヨーロッパでお茶をする人たちを集めてシンポジウムを開きました。情報交換と助け合いが目的でした。このときのパネリストであった神父様は、お茶のどこに惹かれたかというと、もてなしの心だったと語っています。
  「お家元はすばらしいもてなしをしてくださいました。主客の心が一つになる無賓主。これが大事なのです。気持ちが通じないともてなしになりません。キリストは他人をもてなすのも、自分をもてなすのも同じだと言いました。誰それだからもてなす、というのでは本当のもてなしではありません。侘びの心も同じです。大切なものを見せびらかすのではなく、必要最小限の中にすべてがあるのが侘びです」
  フライブルグの茶道講師は「亭主と客は茶室の中で自分が何を望んでいるのかを問われるのだと思う」と言いました。「茶室の中では感謝が一番大切です。ここでお茶を飲めるということがありがたい」
  なぜ茶道を学ぶか、については、自分のあり方を正すことができる。心が何より大切。というのが皆の意見でした。

  最後に野尻先生が開かれている宿泊研修の写真を見せていただき、質疑応答を経て「お茶という独特な文化は日本人にしかわからないものでしょうか。そうではありません。深いところで人間として学べるものがお茶でしょう。そしてこれを学ぶには体験が必要です」 と結ばれました。


協会評議員 小林町子 記




第25回  『Chado in English』
 講 師:グレッチェン・京子・ミトワ 女史 (裏千家淡交会総本部国際部)
    裏千家における英語出版物、英語関連(英語での茶道紹介・
    今日庵案内・通訳など)のご担当をなさっていらっしゃいます。
 日 時:平成20年5月18日13:00〜14:30
 場 所:茶道裏千家東京茶道会館
 呈 茶: 12:00〜13:00

国際的にご活躍中の講師の方々との「一期一会」が楽しい『国際茶道文化講座』の第25回はグレッチェン・京子・ミトワ先生の「Chado in English」を拝聴させていただきました。
小学校5年生からアメリカで茶道と禅のお勉強をされた先生のユーモア溢れるご講演で『英語版実用茶道用語辞典』(淡交社:2007)の編集のご苦労等貴重なお話が伺えました。
第1回に伊住宗匠より「これからのChadoの国際化について」ご講演いただきましてから6年。
改めて『茶を学ぶ』ではなく『茶に学ぶ』の思いが強くなってまいりました。
次回の講師の方との「一期一会」が待たれます。
2008年6月30日 笠島麗月 記







第20回〜第24回  『世界の中の茶道:伝統文化の継承と伝道』

 講 師:森 明子 先生
 日 時:  (それぞれ13:30〜15:20)
    第20回 :英語で語られた茶の湯 : 1960年代まで (平成19年4月22日)
    第21回 :世界へお茶を : 1970年代 (平成19年6月 3日)
    第22回 :世界でお茶を : 1980年代前半 (平成19年8月 5日)
    第23回 :世界でお茶を : 1980年代後半 (平成19年10月7日)
    第24回 :世界の中の茶道 : 1990年代と以降 (平成20年2月3日)
 場 所:茶道裏千家東京茶道会館
 お茶席:当協会講師(12:00〜13:20、15:30〜)

  岡倉天心著The Book of Teaが出版されて101年、裏千家鵬雲斎家元(現千玄室大宗匠)が“Peacefulness through a Bowl of Tea”を提唱し世界に広められて半世紀余、茶道が世界諸国の人々にどのように受け入れられ、根づいてきたのか、を5回に亘りご講演いただきました。
  現在、私たちは、多くの外国に裏千家の支部があることや、外国の要人たちが京都や東京でお茶を楽しまれるご様子の報道を当然のように受け止めています。このように、茶道が国際的に認められるようになっていったことについては、裏千家鵬雲斎大宗匠と回りのスタッフの方々の甚大なお働きがあったことを知ることができました。
  毎回、興味深いお話が続きました。講演を聴きにいらっしゃった方々は、それぞれの半生と照らし合わせながら、時代時代に大宗匠が何をお考えになり、未来を展望なさりながら、何をなされていらっしゃったか、に感動なさったに違いありません。
  このご講演を伺い、深く豊かな日本のお茶の心を再確認し、今後の国際茶道文化交流の一翼を些少なりと担う心持を深く刻むことができました。
  なお、このご講演の内容は、『世界でお茶を』 (森明子著、淡交社)として、2008年7月刊行されました。

  森先生自らが席主となられたシリーズ最後を飾るお茶席では、国際色豊かなお道具のお取り合わせに、心躍る思いがし、とても楽しませていただきました。                  (記:嶋田)













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